いっぺこっぺカナダ/荻ムツ子

2005年夏、鹿児島県出身カナダ在住の女性と知り合いになった。彼女の名前は荻ムツ子さん。といってもメールでのやり取り。いわゆるメルトモである。年齢は・・・・・私より少し上とだけ記しておこう。大志を抱いてカナダへ移住した、同じ鹿児島出身のご主人とそれこそ無一物から農場を経営するにいたるまでの、そして三人の子育ての二人三脚奮闘記が「いっぺこっぺカナダ」。〈いっぺこっぺ〉とは鹿児島弁で〈精一杯〉という意味である。
現在にいたるまでの苦労は想像して余りあるものであることはいうまでもないことだ。しかしこの手の本の陥りやすい苦労自慢話からも見事に逃れ、クスッと笑いを誘い、そして目頭を熱くさせるエピソードの数々。読むものをして知らず知らずのうちに元気にしてくれる本である。

読み進める中で私の心に残ったのが、現地の仏教会のメンバー(いわゆる門徒)になったこと、お経は日本語、お説教は英語と日本語、どちらもよくわからないままお寺の行事に参加してきたことがさらりと書いてある部分だった。早速カナダの荻さんにメールを出したら、すぐに返事がきた。その後何回ものメールのやり取りを通して、お念仏のともがらが(=はらから)が遥かに海を隔ててここにもいらっしゃることを知り心から嬉しく思った。彼女の愛唱歌が真宗宗歌と恩徳讃と月の砂漠。農作業に従事しながら《六字のみ名を称えつつ、世の生業(なりわい)にいそしまん》と真宗宗歌を広い農場でくちづさみつつ、時にわめきつつ(?)決して楽ではない農作業をこなしてこられた。帰宅すると、今日もいっぺこっぺでしたと手作りのお仏壇に手を合わせベッドに倒れこむ日々。その彼女を支えて来たのがお念仏のみ教えだった。
荻さんの許可を得て彼女からのメールの一部を紹介しよう。
「恩徳讃や真宗宗歌、メロディは勿論ですが歌詞の一言一句が素晴らしくって、、、
寂しくなったら恩徳讃のメロディを口ずさみ、先が見えなくてへたり込みそうになったら、《六字の御名を称えつつ、世の生業(なりわい)にいそしまん》と歌えば自分のやるべき事を出来る限りやりさえすれば後はご縁のままに、成るように成ると、不思議と心が落ち着き何とか今日までこさせて頂けました。ひょっとしたら、ここに来ていなかったらこういう有り難いご縁にめぐりあう事はなかったかもしれません。感謝の限りです。」
阿弥陀様は確実にここでもはたらいていて下さることを、彼女の生き様に再確認させていただいたことである。

「海の内外のへだてなく、
み親の徳の尊さを
我がはらかにつたえつつ、
浄土(みくに)の旅を
ともにせん」
《真宗宗歌三番》

けやき出版  1470円 e38184e381a3e381bae38193e381a3e381b4_01

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