小林秀雄 『Xへの手紙』
紹介するのが少し気恥ずかしいのだが、その理由ははっきりしている。誰もが難解という小林秀雄の文章だからだ。お前さん、読んだはいいが解ったのと聞かれたらゴメンナサイと頭を下げてスタコラ逃げ出すより手はない。しかしその文体に名状し難い引きつけるものを感じて結局、後年全集を買った。読んだ時は文庫本。
「女は俺の成熟する場所だった。書物に傍点をほどこしてはこの世を理解して行かうとした俺の小癪な夢を一挙に破ってくれた。と言っても何も人よりましな恋愛をしたとは思っていない。」
中原中也の愛人を横取りし、同棲。その相手との修羅場などなど小林秀雄研究者か調べたエピソードなど事欠かないが、そんなことはどうでもいい。分かろうが分かるまいが、兎に角小林秀雄の文体に自分は惚れ込んだのだった。